第5章 え?スパイになるなら生かしてやる?誰だお前
目を開ける、知らない天井が見えた
「起きたか」
声が聞こえる、腐るほど聞いたオビトの声だ
「ここは」
「見たところ、お前には利用価値がある」
変な模様のお面が見える、私はそれをただ見つめていた
ようやく、時が進んだのだと理解した
体を起こそうとするが、全く動かない、視線だけを巡らせる
「お前はあの場で万華鏡写輪眼を開眼した」
視界の端で仮面が揺れ動く
万華鏡写輪眼、ああ、気分は最悪だ。だから、生かされたのだろう
「あなた誰?」
「うちはマダラだ」
私は息をつく
「イタチ兄さんは?」
そこでようやくオビトが視界に写りこんだ
「お前はまだアレを兄と慕うのか?」
思わず押し黙る
「まぁいい、俺の目を見ろ」
いやだ、と言いたかったが言わずともしょうがない、私はそろり、と視線を合わせた
瞬間、おびただしい量の情報が頭の中を駆け巡る、思わずうめき声が出るが体は不思議と動かない
何が駆け巡るって、いわゆる洗脳に等しいものだろう、うちはの歴史をくまなく晒し木の葉が悪だと印象付けるような、そんな映像だ
それが終わる頃には私はすっかり疲弊して今すぐにでも意識を手放してしまいたいぐらい嫌になってしまった、だけど、私は全部知ってるのだ、今のは全て事実だが、それが全体像ではない
木の葉には光も影もある、ダンゾウが木の葉にかかる火の粉を全て振り払うことに過剰になったのは確かに事実で、それでうちはが滅んだのもまた事実だ。だけどそれが全てじゃない、最後まで反対した火影はどうなる、心を痛めたナルトはどうなる
うちはに全く非がないように見せるのは印象操作以外の何者でもない
「こんな……はぁ、こ、こんなことして、何が目的なの?」
上がる息を整えながらオビトを睨め上げる
「今ここで、生きるか死ぬかを決めろ」
足元から這い上がるような殺気を感じて生唾を飲む
「生きるか、死ぬか…」
そうだ、と彼は仮面の奥の赤い瞳をすうと細めた
「命乞いをするような奴にはお似合いの話だ。暁に降れ、そうすれば殺しはしない」
………
…………えっ、え~~急展開すぎない?