第4章 ところでとうとうヤツが来たんだが
もう諦めるんだ、こんな不毛な事、私のせいで皆が皆望まない世界をそうとも知らずに回り続けている、もう、薫は生き返らない、私が弱いせいで、私が不甲斐ないせいで、私が、次があると甘えたばかりに
目のない死体を物置部屋の奥に預けて家を出る
道端に倒れているサスケを何となく見下ろす、こんな光景もう見飽きるぐらいに見てきた。
背後に気配がしてゆっくりと振り向く
「ごめんなさい」
謝罪の言葉が出る、イタチの顔はみえない、いや、幻術にかからないように見ないようにしていた、それがもうすっかり板についてしまって彼の顔すらよく思い出せない
笑った時の顔はどうだったか、サスケを見る時に穏やかな顔をしていたように思うがそれはどんなものだったのか
「とっくに薫は死んでいたのに」
両手で顔を覆う、もう詰みじゃない、最初から詰んでいたのだ
それを、そうだと受け入れず、私は何度も殺した
そう、私が最初から諦めていれば薫は一度死ぬだけで良かった、私のせいで死に方を変えて薫は何度も死んだのだ
目頭が熱い、感情の起伏がない、やり直せば生き返るという事実が私の心を殺していく
「私を殺さないで、もう疲れたの」
この命乞いは弟の死を認めなければならない願いだ
「……」
「お願い、殺さないで」
私は自分の手で何度も自分を殺し、そして自分のエゴで弟を殺した。こんな悲劇をリフレインさせ続けているのだから当然の報いだろう
頭が痛い、目が熱い、正面の彼はやはり私を殺すのだろうか、自分がどんな顔をしてるかよくわからない、何度も何度も繰り返したせいで、今日の朝ごはんも交わした会話も、全部どうでもよく感じてしまって、もう何もわからないんだ
せめて諦めるしかないのなら、時を進めて諦めさせてくれ
私には薫を見捨てて里から逃げることはできない、そんなことはしたくない
「私を」
そんなこと言う権利がどこにあるのだろうか
ショックからか意識が遠のく、ひたすらに熱い目頭だけが鬱陶しいと感じていたように思う