第4章 ところでとうとうヤツが来たんだが
詰所に近づくにつれ人がまばらになっていくことに多少の絶望感を覚えながらいつもの散歩道をひたすらに走る、着く頃には喧騒がなりを潜め静寂と点滅した街灯の明かりが辺りを覆った。詰所の電気が点いてないことに焦りながらもバンバンとドアを叩く、おいおい今日に限って飲み歩いてるとかじゃないだろうな
数回叩いたあとに様子を伺うために手を止める、詰所の中にもあたりにも人の気配はない、人の気配がない、しまったと思うのも束の間、バンと音を立てて私の体はドアに押し付けられる
「面白いガキだ、どこまで知っている?」
私の胸ぐらを乱暴に掴むお面を睨め上げる、私としたことが余りにも迂闊すぎだ、気が抜けない局面だったというのに
「あなた、誰」
赤い瞳に魅入られて動きが取れない、だが勝機はある、弟だけでも火影亭に預けることができるとわかったのは儲け物だ
「うちはマダラだ、知ってるだろう?」
うそぶくな、変わらず睨むと、知らないのか?とため息をつかれた
「まぁいい、と、こちらももう終わったようだ」
終わった?私が首をかしげていると、時空が歪んで、弟と分身のオビトが姿を現した
「……は?」
「驚いているようだな、まぁ無理もない」
乱暴に弟を投げる、私はそれを必死で受け取り弟を見る
目はくり抜かれていない、が、死んでいる
私は、思わず弟を落とした
「ど、どうして」
確かに火影は匿うといったはずだ
「どうして」
弟を抱き上げる
「火影も人間だ、嘘の一つや二つつくさ」
私はオビトを見上げる
「火影様はそんな人じゃない」
「お前に火影の何がわかる?」
三代目はそんな人じゃない、そこを否定すれば私の今までは全て無駄になる
私は弟を見る、考えられるとするならば弟が火影亭から逃げ出したのだろう、彼の頬を撫でた
つめたい
薫は一体あとどれだけ死ねばいいのだろう、私は一体あとどれだけイタチに一族を滅ぼさせればいいんだろう
「お前は見捨てるしかないんだ、自身の家族を」
やめてくれ
「お前は誰も助けることなんてできない」
やめてくれ
「お前は何もできないんだよ」
もういやだ