第4章 ところでとうとうヤツが来たんだが
「?」
サスケが顔を覗き込む
「……ごめん、忘れ物したから、先帰ってて」
引きつったような笑みになるが、サスケはそうか?と言って帰ってしまった、足音が聞こえなくなったところで私はその場にしゃがみこむ
疲れた
弟を生かすために何度もやり直す、こんなのは負の連鎖だ
だけど、私にはもうとっくに弟を諦めるという選択肢はないのだ。大丈夫、確実に進んでいる、大丈夫
…………足が動かない、気力を振り絞ってのろのろと歩き出した、こんなことじゃダメだ
「大丈夫よ、今までのことは全部悪い夢なのだから、大丈夫よ」
うちはの門をくぐって家の前まで走る、途中サスケが倒れていた
「サスケ」
大声を出す気力もなく、申し訳程度に横に膝をついて体をゆする
涙と鼻水とかで顔がぐちゃぐちゃだ、息をしてることを確認して私はのろのろと家の中に入った
物置部屋のドアを開けたとき、むわ、と血の匂いが私を包んだ
「かお、る?」
嫌な汗が吹き出す
「薫?」
物置を分けて薫が隠れている場所を見る
「あ、そ、そんな、薫」
真っ赤な血だまりに、目のないなにかが、なんだこれは、こんなの、ああ、よくできた人形だ、薫は、私が出て行った少し後に死んでいたのだ
今までの苦労が無駄だと言われているようで、全ての力が抜け落ちた、立っていることもままならないがここからでなければ
立ち上がり、なんとか便所まで行き、昼食べたであろう物を全部吐き出した
もう今日のお昼何を食べたのかもよく思い出せない、私はそのまま玄関を出る、門のところにイタチがいた
「……あなたがやったの?」
そんなこと、わかりきっているのに
「そうだ」
短く返す、私はその場から動けずにいた
「どうして、薫を殺したの」
涙があふれる、そんな私を見てイタチは顔色ひとつ変えない
「己の器を計るためだ」
ああ、彼こそがアカデミー賞だろう、なんという演技だ。全部理解してる私でさえも彼に罵詈雑言を履きたくなるような憎たらしい顔
涙を拭く、大丈夫、私はまだ諦めていない
「薫はまだ里のことを何も知らなかった、クーデターの気配も、うちはの扱いも」
イタチを見る、やはり毅然として私を見た
「早く殺して」
その一言で、ようやく彼の瞳が揺れた
「そのつもりだ」
諦めないって、何を諦めないんだろうか