第4章 ところでとうとうヤツが来たんだが
「イタチ、これはどういうことだ」
見上げるとイタチが私を見て困惑した色を作った
「話が見えない」
「とぼけるな」
張り詰めた空気が流れる
「コイツはお前の任務の内容を知った上で逃亡を計っていたぞ」
ぎろり、という効果音が聞こえてきそうだ、イタチは眉をひそめた
「……本当に知らないようだな、まぁいい、分身の方もすぐに戻る」
まさか、私は顔を上げると彼の隣の景色が歪んで、おそらく分身が姿を現した、薫を連れて
「薫!」
駆け寄ろうとして埋まっている腕を引き抜く、それとほぼ同時に足を払われ蹴り飛ばされた
「ね、姉ちゃん、背中が…」
私はお面を睨め上げる、奥の赤が挑発的に歪んだ。よろよろと弟に這いより頬に手をやる
「薫、怪我はない?」
抱き寄せるが、目立った傷はないようだ
「姉ちゃん」
半泣きの弟が私の服の袖を掴む
「ふむ、どうやら主犯はお前だな」
私は薫の背中に手を回して彼の足元を睨みつけた
「残念だがおまえの負けだ、さぁ吐いてもらおうか、そうすれば弟だけは生かしてやろう」
「誰がいうもんですか」
かぶせるように吠える、弟だけ助かった所で意味はない
「……そうか」
さほど興味もなさげに体を起こし、イタチのほうに向く
「聞き出せ」
私は奥歯を噛み締める
「俺は生き残りがいないか見てくる」
それだけ言うとどこかに消えた、よかった、すぐに殺されるわけではなさそうだ
「イタチ兄さん、私が昔に言ったこと覚えてる?」
「……それは」
思い当たる節があるのか彼は私の言葉を待った
「私が死んだ時に見たものだよ、これを、これを見たの、だから私は誰とも仲良くできなかった」
私は横に居た薫に目を移す
「悪い夢でしょう、こんなものは」
イタチと目を合わせる、彼はこちらをジッと見つめている、ただ何も感じさせない表情で、眉を寄せるわけでもなく、目を伏せるわけでもなく
「最初から、分かっていたのか?」
私は彼を見つめる、怪我をしたこの体で弟を抱えてオビトを躱してイタチを倒して火影亭にたどり着くことは不可能だ
「ごめんなさい」
今更何を許せというのか、最初から全てを理解した上で何もできなかった私を
「」
私は取り出したクナイの刃先を翻す
「!」
「私を許して」
無力な私を許して欲しいのだろうか