第4章 ところでとうとうヤツが来たんだが
「あ、もうこんな時間、早く帰らなきゃ」
サスケの声が聞こえて顔を上げる、私も修行に熱中しすぎたのかあたりはすっかり暗くなっている、カバンを持ち上げふと空を見た、そんな私を見てサスケも空を見る
スーパームーンも裸足で逃げ出す満月が夜空に浮かんでいた。気味が悪い
「うわ、変な月」
「早く帰ろう」
そう言って走り出す、サスケも私のあとを追った、確信的なまでの嫌な予感が私の頭の中を埋め尽くす
二人でうちはの門をくぐる、瞬間むせ返るような血の匂いに思わず顔をしかめた
「なんだよこれ…」
目の前には血を流した死体が転々と有る、私もサスケも最悪の状況を想像してしまい我も忘れて走り出した
サスケとは家の前で別れ玄関を開け家に飛び入る
二階を見る、いない、一階を見る、いない、押入れも、風呂場も、両親はおろか弟もいない、まさかと思い立ち尽くす、そんな、まさか、不意にカタと小さく音が聞こえた。私は祈るように物置部屋に駆け込む
「薫?」
小さく呼ぶ、物置の奥で影が動いて弟が顔を出した、私は駆け寄って弟を抱き寄せる、よかった、生きている
「ね、姉ちゃん、皆なんか変なんだ」
カタカタと震えながら弟は私にすがった
「大丈夫、薫、ゲームをしましょう」
ゲーム?震えた声と涙のたまった目を私に向ける
「朝まで隠れていなさい、いい?これはゲームよ」
言い切ると、弟は首振り人形のように頷いた
「見つかったら逃げるの、朝までずっと、わかった?」
「わ、わかった」
私は弟を抱き寄せると布をかぶせて家を飛び出した、少し向こうでサスケが倒れている
「サスケ!」
駆け寄って抱き上げる、意識を失っているようだ、ということは近くにイタチがいるはず
「か」
冷たい声が聞こえて私は顔を上げる、電柱の上に丸い影が見えた、赤い瞳が私を見据える、普通の車輪眼じゃない、万華鏡写輪眼だ
「イタチ兄さん?これは何?だれがやったの?」
我ながらアカデミー賞もかくやという演技っぷりだ
イタチが動く、目の前に立ち私をじっと見据えている
「全て俺がやった」
背筋が凍る、彼から色濃い殺気がにじみ出ている
「どうして」
「」
名前を呼ばれて目が合う、まずいと思ったときには遅く
「己の器を計るためだ」
ふ、と景色が変わる、まずい、幻術に取り込まれた