第17章 無限月読
「どしたのねーちゃん」
顔が、違う、重なっている
ブレた線のように顔が重なって見える、なんだこれ?誰だこれ?
私は弟の横を慎重に通り過ぎて居間に出る
「あらおかえり!ちょっとお父さん、テレビばっかり見てないで食事運ぶの手伝ってくださいな」
逃げるように階段を駆け上がり自分の部屋に入って鍵を閉める
顔が二重になってた、訳が変わらない、自分の部屋も懐かしいけどなんか違う
何がどうなってる?なんでこうなってる?なんだこの世界は?
「ねーちゃんなんか変なんだよ」
「まぁ、心配ね……でも今日はの好きなもの用意してるからきっと食事時になったらすっ飛んでくるわよ」
声が聞こえる、声も二重だ、知ってる声と知ってる声、私の名前はソレじゃない
私は部屋に視線を巡らせる、ナルトの漫画が目に入った
そうだ、落ち着こう、一旦現実逃避をしよう、69巻を手に取って読む
丁度無限月詠のところだ、私ははーとため息をつく
「こんな世界望んじゃいないよ」
こんな世界
こんな世界?
ぴしりと世界に亀裂が入る
そうだ、私は無限月詠にかかっているんだ
思い出した、私はナルトの世界にいて、無限月詠で望んだ世界に来たんだった
慌てて立ち上がり部屋を開けようとドアノブを握る
今思い返せばわかる、あれは二人の弟だ、わたしは知っている
これが、これが望んだ世界?
「違う」
息を吐き出し額をドアにくっつける
「こんなの望んでない」
ぴしり、亀裂が大きくなる
あぁ、そうか
私の望む世界は
ばり、と遠くで音が鳴る、姉ちゃん!と声が聞こえた
共存できないんだな