第7章 僕だけの青いイチゴ
『でもそれじゃ月島君も写っちゃうけど、いいの?』
「僕は構わないよ。それとも、キミの方に不都合があるの?」
そんなことない···そう言ってスマホを傾ける、キミ。
僕は特に微笑むわけでも、ポーズを決めるわけでもなく···ただ、ケーキ皿と同じ被写体でいい。
大事なのはそんな事じゃないからね。
この日に、キミが僕と過ごしたったいう···思い出。
それは僕も同じだけど···さ?
『撮れた~!見て、可愛く撮れたよ!』
写メの出来栄えに喜ぶキミに油断したのか、つい、顔が緩んでしまう。
澤「へぇ···月島も池田さんには、あんな顔するんだなぁ」
菅「ホントホント、オレ達いつもは気難しい顔ばっか見てるもんなぁ」
旭「アハハ、確かに」
コホン···と小さく咳払いをして、カップに口を付ける。
いつまで僕達を眺めてんだよ、見世物じゃないし、早く帰ればいいのに。
「食べよ、写メは取れたんでしょ」
『うん、我ながら可愛く撮れたよ?ほら、月島君も』
「僕が可愛く撮れてどうすんの?意味ないデショ?」
言いながらフォークを持ち、食べるよ?と見せると、池田さんも同じように手に取った。
『ん、美味しい···』
ひと口食べる度に表情豊かに美味しいと言う姿を見て、心が擽ったい。
『サンタさんイチゴも···ん~!美味しい!』
菅「アハハ、春華ちゃんはイチゴ好きだもんね~」
そうなの?
別にそれが好きだろうが、その事を知っていようが僕には関係ない、ケド。
あのお邪魔虫達が入り込めないように···
「そんなに好きなら、僕のもあげる。ほら?」
そっとフォークに乗せて、池田さんの口元まで運ぶ。
『それは、さすがに···』
「早くしないと、落ちる」
戸惑いの理由は、イチゴを譲られることではなく。
きっと僕が使っていたフォークだからだよね。
でも、そんな事でドギマギする姿が可愛らしいから、僕もそれは譲らない。
「ほら、早く?」
唇に触れるギリギリの距離で、意地悪に微笑んでみる。
「あ~ん?」
『つ、月島君···からかってるんでしょ?それにショートケーキからメインのイチゴさんを私が食べちゃったら、月島君は損しちゃうよ?』
顔をイチゴのように真っ赤にしながら、池田さんは瞬きを繰り返す。