第4章 赤鼻のサンタクロース
部活優先なのを許してくれるからじゃない。
全て含めて、オレを理解してくれてるからだ。
「春華···やっぱり襲っても、いい?···キス、したい」
抱き寄せ合う体を離して、まっすぐ春華の目を見た。
見つめあったまま、春華の瞳が揺れる。
春華は何度か瞬きを繰り返して、やがて···そっと目を閉じた。
それを見て、また···胸の奥がドクンと鳴る。
ゆっくり···触れるだけのキスを落とす。
春華の唇がピクンと震えて、ドキドキが増して行く。
触れたばかりの唇を離して、コツんとおでこをくっつければ···それがオレ達のキスの終わりの合図。
本当は、もっと···なんて、欲張りかな?
『ね、やっくん···もっと、とか言ったら···ダメ?』
キュッとオレのジャージを掴み、春華が顔を上げる。
···ダメなわけ、ないじゃん。
フッと笑って頭をかき寄せ、飽きることなく唇を寄せた。
『ん···』
寒さなんて、どうでもいい。
この暖かささえ、感じられれば···
でも···
やっぱ寒い!!
「···っくしゅん」
パッと体を離して、耐えられなかったクシャミをする。
ヤバ···せっかくの雰囲気が台無しだな。
「ゴメン···」
春華はそんなオレを見てクスクスと笑いだし、ちょんっとオレの鼻をつつく。
『やっくん、鼻が真っ赤になってる。トナカイさんみたい』
寒いんだから仕方ないだろ!とオレも笑って返す。
「そんなこと言ったら、春華はサンタクロースだな。音駒の真っ赤なウォーマー着てるんから」
お返しとばかりに言ってやると、春華はオレの頬に手を当てて微笑んだ。
『サンタクロースは、やっくんだよ。私だけの···サンタさん。だから絶対、毎年いてね?』
「···言われなくとも」
春華の手に自分の手を重ねながら抱き寄せる。
「キス、やり直しても?」
瞼を閉じて、オッケーの合図。
まつ毛をひと撫でして、春華にオレはまた唇を落とす。
いつまでも終わることのないオレ達の甘い時間。
そんなオレ達を、ひらひらと舞い落ちる雪の中で···公園の雪だるまが静かに微笑んでいた。
~END~