第4章 赤鼻のサンタクロース
「はぁ···」
休憩時間に体育館の外を見て、思わずため息が漏れる。
雪、か。
どうりで寒いと思った。
東京では珍しい、クリスマスの雪。
チラチラ、チラチラと細かく揺れながら、曇天の空から舞い落ちてくる。
黒「なぁ~に切ないため息なんか漏らしてんだ、やっくん?」
「ほっとけよ」
ぶっきらぼうに言って、頭に乗せられたニヤつくクロの手を払い除けた。
研「やっくんの不機嫌、おれは知ってる···」
スクイズを口にしながら研磨がボソッと言う。
黒「実は···俺も知ってる」
またもニヤリとしながらクロがオレを見て、今日はあの日だもんなぁ?とからかいの目を向けた。
「だから、お前らうるさいっての!」
研「春華、おれ達が一日練習って言ってたからバイト入れたって言ってた」
···知ってるよ、そんなの。
アイツに部活の予定を教えたのは、他の誰でもないオレだから。
監督も、ちょっとは空気読んでくれよ。
アイツと付き合い出してから、初めてのクリスマスなんだぜ?
なのに、そんな時に一日練習とか···ないだろ。
オレは結構前から、いろいろ考えてたのにさ。
初めてクリスマス、どこに行こうか?
イルミネーションとか好きそうだよな?
遊園地でデートして、そのまんま遊園地のイルミネーションを楽しんで···とか。
プレゼント、何にしよう···とか···
「はぁ···」
モヤモヤする気持ちに拍車をかけるように、雪は容赦なく降り続く。
リ「ええっ?!ハルは今日来ないんですか?!」
研「来ない。バイトだから」
リ「バイト?···こんな日にバイトとか、ハルも災難っすね!」
オレだって一日練習とか災難だよ!
「っていうか、リエーフ!お前が春華をハルとか呼ぶな!」
リ「うわぁ、夜久さんヤキモチ妬くとかちっさ!身長と比例してるんすか??···って!蹴り入れんのやめて下さいよぉ!」
「うっせー!お前はこの後で地獄のレシーブ特訓してやる!」
リ「もぅ~!そんなんだからハルはバイト先で変な男に言い寄られるんすよ!」
「だから!お前は春華を···え?!」
変な男に言い寄られる?!
なんだよそれ!
「そんなの聞いてねぇぞ?!」
っていうか、リエーフは何で知ってるんだ?!