第3章 セカンドガール
「…お前は馬鹿正直でブスでマヌケで、人を見る目ねえし、スゲーうぜえ。」
「ちょ、なんでそんな急に悪口とか言い出す訳!?」
反論しようと賢太郎の胸から顔を上げ、賢太郎を睨みつけると、意地悪な表情でも、馬鹿にした表情でも無く、バレーをしてる時のような真剣な表情だった。
「けど、お前みたいな奴でもいいって思ってる奴もいんだから、もっと周りをちゃんと見ろよ。」
「だから私は、誰かの1番に、」
「とっくの昔からお前は俺の1番なんだよ。」
そう言って噛み付かれるように唇を強引に重ねられ、深く堕ちていくようなキスに目眩がした。
リップ音と共に離れた唇。それを惜しむかのように二人の間を銀色の糸が繋いだ。
賢太郎に聞きたい事は山ほどあるけど、そんな風に賢太郎を見た事が無かったから、思考が上手く纏まらなかった。
「い…いつから…っ?」
「んな昔の事覚えてられっかよ。」
「なんで私、なの?」
「知るかよ。」
再び唇を奪われそうになり、慌てて下を向いた。けど、顎を掴まれ、鋭い眼光から逃れられない。まるで蛇に睨まれた蛙。
「誰かの1番になりてーんだろ?なら俺にしとけ。」
そう言って再び唇は塞がれた。強引にされた行為にも関わらず、不思議と嫌な気持ちにはならなかったのは、痛いくらい、賢太郎の真っ直ぐな気持ちが向けられていると分かったからだ。賢太郎を押し退ける事も出来たのに、私はそのまま賢太郎のキスを受け入れた。
来年も再来年もその先も、あんな事もあったねなんて言って毎年、賢太郎と二人クリスマスを過ごす事になるなんてこの時の私は知る由も無かった。