第4章 6月『緊張』
「では、この問題。
皆さん、解いてみてください。
10分あれば、出来そうですか?…フフッ」
今は、衣笠先生の数学の授業中。
その微笑みは千人もの人を魅了するという。
かく言うClassAもその1つ。
頭でっかちでB6みたいな美形が遠い為か
うちのクラスには美形に対しての免疫がない。
衣笠先生が微笑む度に
女子も男子もざわめき立った。
馬鹿馬鹿しい……。
窓際で一番後ろの席の僕は、
視線を黒板から逸らして、
ぼんやりと窓の外を見る。
「……………………はぁ。」
外は雨が今も降っていて、
昼間なのに、少し薄暗かった。
「…君?
外に何か見えましたか?」
「ぅわっ…!」
耳元で囁かれ、体がびくりと震える。
声のした方を見ると、衣笠先生が
僕の隣で窓の外を覗いていた。
「おやおや…バカサイユに明かりが
ついていますねぇ…。
B6の誰かが授業を
無下にしているのでしょうか?」
衣笠先生の言葉にもう1度外を見ると、
確かにバカサイユに明かりがついている。
この時間……寝るとしたら、瞬かな?
もしくは瑞希かもしれない。
「………あ、南先生。」
南先生が傘をさして
バカサイユに向かっているのが見える。
永田さんが中に招き入れ、
中に入っていった。
……ということは、各自寝ているというより
B6全員でサボっていたみたいだ。
「……フフッ、中では
どうなっているのでしょう?」
「多分、南先生が騒ぎに騒いで、
授業もそのまま終わるのでは。」
「フフッ………確かに、その可能性は
無きにしも非ず、ですね。」
新任の先生がいくら騒いだ所で、
B6がそう簡単に動くはずがない。