第3章 5月 『以心伝心』
「…毎度言ってますけど、」
「『急に話しかけるのは
やめてください』だろ?」
「……分かってるのならやめてください。
キヨに言い付けますよ。」
「ゲッ、仙道?勘弁してよ。
アイツの悪戯、半端ないんだからさぁ。」
「…………………ふん。」
憎まれ口を叩きつつ、
は俺が玄関まで同行するのを
いつも許してくれる。
………少しはに近付けたかな。
少なくとも、4月よりは大きな進歩だ。
「そういや、来週から6月だろ?
体育祭の種目決めがあるから、
そのクラス会議だけは参加しろよな。」
「嫌です。」
「はぁ…。
間髪入れず思い切り否定したな。」
「嫌なものは嫌ですから。」
「楽しいと思うけどなぁ…。」
まぁ、は体育、
そんなに好きじゃないもんな。
草薙と違って。
…でも成績はいいんだから、
もっとちゃんとやればいいのに。
…ただ、柔道と空手はある程度できると
聞いたことがある。
『……僕は体が小さいから、
基本的に舐めてかかってくる。
そういうのを思い切りやっつけるのが
楽しい。』
と、あくまで一般人向けらしいけど。
「楽しくなんか…ありません。」
俺に目も合わせずに首を振る。
は少しの妥協も見せない。
ううむ、これは長い戦いになりそうだ。