第12章 1月 『解け始めた氷』
「パウ!パウ〜!!」
「あ、こらパウ。走り回っちゃだめだよ。」
「ピィー!!」
「タクも追いかけないの。危ないから。」
2人を宥めるように言葉をかけながら
紅茶を1口飲む。
……………うん、やっぱり美味しい。
「トゲー。」
それを見ながら、
トゲーも紅茶の横でぬるま湯を飲み始めた
………あ、トゲーいつの間に
ぬるま湯もらったんだろ。気付かなかった。
無邪気な2匹を見て黄昏てるトゲーを横目に
僕も2杯目を淹れる。
……まだ時間はたっぷりある。
バカサイユに行くことは考えていたけど、
手持ちの本だけで時間潰せるかな………
「さん、本をお持ち致しました。」
「……………え、本?」
永田さんが目の前のテーブルに
本を並べ始めた。
1、2、3………10冊はある。
「…………こんなに?しかも…
外国の本ばっかり。」
表紙に書かれているのは
英語やドイツ語……フランス語まである。
「はい。最近外国の本を読んでいらしたので、
そちらを中心に揃えてみました。
……如何でしょう。」
ふわりと微笑む永田さんに、
目をぱちくりさせる。
………………最近瑞希にドイツ語とフランス語を
教えて貰ってから読みはじめたのは事実。
……でも、そんなことまで知ってるなんて、
思わなかったな。
「…………………。」
…永田さんって、翼のことだけを
よく見てると思ってたけど、
僕の事もよく見てるんだ。
「………それは心外ですね。
私は…翼様の事も、翼様のご友人…
B6の皆さんの事も、
存じ上げているつもりですよ。」
永田さんは僕の言葉に返事をするように
言った。
………僕、何も言ってないのに。
「…心読まないで。」
僕がそう言うと、
永田さんはニヤリと笑う。
「ふふっ…申し訳ございません。
草薙さんに、さんの無言語の意味を
先日レクチャーされたものですから。」
「………むぅ。」
僕が頬を膨らますと、永田さんは続けた。