第12章 1月 『解け始めた氷』
「いよいよ、だね。」
冬空の中の早朝、
僕はセンター試験の会場に来ていた。
「……頑張って。」
今日、僕は朝一番にみんなを見送りに来た。
「おう。ほら清春!行くぞ。」
「……チッ。せっかく入口にイタズラして
全員滑らせてやろうと思ったのによォー」
「……やっぱり、キヨを連れてきて
正解だったね、兄さん。」
「だな。」
早めに家を出てキヨを迎えに行った
兄さんとキヨ。
イタズラを仕掛けるかもっていう兄さんの勘は
的中したようだ。
事前に防げて良かった。
「………いってらっしゃい。」
「任せろ、ばっちり決めてくるぜ!
また、帰り…学校でな。」
「うん。待ってる。
…キヨも頑張って。」
「わぁーってるってェの!」
キヨがブツブツ文句を言いながら、
兄さんと会場に入っていくのを見送る。
試験……上手くいくといいな。