第11章 12月『聞こえなかった兄の声』
「………………。」
ちらりとを見ると、
眉間にシワを寄せてブツブツと
文句を言っている。
「……君どうしたの?
なんか、具合でも悪いのかしら。
俯いちゃって。」
「違うよセンセ。
は聖帝祭嫌いだから
帰りたいんだよ。
ポペラ楽しいのに、勿体ないよね〜。」
そう言うと、先生の目が見開く。
「え!?帰るの!!?君!!」
「えっ……あ………その。帰りたい、です。
帰らせて貰えないだけで。」
が俺の方を見る。
………んな目しても、絶対帰さねぇぞ。俺は。
「…………………めよ。」
先生がその言葉にぼそりと呟く。
「…………え?」
「ダメに決まってるじゃないの、そんなの!」
先生がの肩をがしりと掴む。
「こんなカッコイイ男の子、
誰が放っておくもんですか!!!
ほら!入るわよ君!今!今すぐ!」
「………え、え?あ、せんせ……」
「ほら!みんなも入るわよ!!
君!ほら入って!!!」
「……あ、だから……帰ります……僕…。」
「何言ってるの!!
蒼い王子様が紅いタキシードを
翻して帰ってきたのよ!!
こんなの、見逃せるもんですか!!!」
「……や、だめ。せんせ、引っ張らないで!
あ……ちょっ!!」
は先生に引っ張られて
おずおずと中に入っていく。
中に入ってしまえば、
会場が解散となるまでは外に出られない。
予想をしていなかったが、を
中に入れる事が出来てホッとする。
と先生に続いて、
他の奴等も入っていった。
「担任がいて良かったな。一。」
「…おう。」
俺と翼も中に入る。
聖帝祭はこうして幕を開けた。