第2章 4月『沈黙の少年』
「…翼。」
「なんだ?」
翼と僕しかいないバカサイユ。
兄さんは先に帰ってしまっていて、
2人でオセロをして遊んでいた時。
「……………その、嫌かもしれないけど、
お願いがあって。」
「なんだ?聞いてやろう。」
僕はもぞもぞと翼に話しかけた。
僕は悟郎と違って、
頼み事を言うのがとても下手だ。
兄さんは言わなくても分かってくれるから
いいんだけど、翼はそういう訳にはいかない。
「…もうすぐ兄さんの誕生日なんだ。」
「…………ほう。そういえばそうだな。
来週あたりか?」
「……うん。それで、その。
どうしても用意してほしいものがあって。
でも、その……多分これ言ったら
嫌がるかもしれない。
でも、翼にしか頼めないことだから、
えっと……。」
順を追って説明しようと思い、
ぼそぼそと話す。
誰かのために翼にお願いするのはまだしも、
これは僕個人としてのお願い。
なんて言おうか迷っていると、
翼が口をへの字にした。
「………勿体ぶらずさっさと言え。」
「…あ、うん。ごめん…。」
やっぱり
僕は言うのが下手らしい。
「………えっと……あのね…………」
もぞもぞと翼に喋る。
伝わったかな。
「…………………ッはぁ?」
僕が頼みたいことを伝えると、
翼がおかしな声を出した。