第10章 11月『王子様の超越』
髪はいつも自分で結んでいた。
役的にはハーフアップが良いと聞き、
やってみてはいるが、
いつもの1つ結びと違って難しいので
すぐ解けてしまう。
悟郎は器用に髪を結ぶし
なんでもできるから安心だ。
「ついでに編み込みもしちゃうもんね!」
そう考えると、いつも髪をクルクルにして
仕上げてくる悟郎は凄いなって思う。
「あ!アイロンも持ってきて良かったー!
の髪もクルクルにしちゃお。」
毎朝何時間かけてるんだろう。
朝起きて、ご飯食べて、
歯を磨いて、髪の毛をやって化粧をして
それから家を出る。
僕なんか顔だけ洗って
朝はチョコ1つ、の時もあるのに。
悟郎って朝、何時に起きてるのかな。
「前髪も、ちょっとだけウェーブかけてっと。
あ、なんか外人っぽくなってきた…。」
寝坊したらどうするんだろ。
急がなきゃ間に合わない日とか………
………あ、そのまま遅刻して行くのか。
成程。悟郎なら有り得ない話じゃない。
「できたーーー!
レイ、ポペラ王族の雰囲気ある!!」
「………………って、え!?
何これっ頼んでない!!」
鏡を見ると、
三つ編みの入ったハーフアップに
毛先と前髪がクルクルに仕上げた
自分が写っている。
「へへ、可愛いでしょ。
ワックスで固めとくね!
ゴロちゃんワーックス!!」
「……ううう…うそだ、
こんなの絶対目立つ………。」
「何言ってるのレイ!
元々目立つからいいじゃん!!」
悟郎が手にワックスをつけて、
髪に馴染ませていく。
「仕上げはスプレー!シューッ!」
今度は結び目や毛先にスプレーを吹き付ける。
鏡には自分じゃない自分が写っている。
うう、なんてこった。
気合を入れているのは
真田先生だけじゃないみたい。