第9章 10月『王子様の憂鬱』
「ごめん、俺見たことないかも。」
俺がそう言うと、クラス委員の男子が
腕を組む。
「……それなら、小道具係の全員が
順番に着てみたらどうです?」
「………えっ」
「その後クラスで多数決を取ればいい。
それで王子役を決めませんか。」
「そうしましょう。
衣装は確か倉庫にあるはずよね。
持ってきましょう。」
「…そ、そんな………。」
クラス委員が女子に指示をして
勝手に進めていき、
小道具係が慌てふためく中、
女子生徒が何人かが衣装を取りに行った。
小道具係はおろおろと顔を見合わせている。
それを見て、クラス委員の
眉間のシワが寄った。
「こんな所で時間を使うのは
勿体無いの。さっさと決めて
作業に移らなくちゃいけないのに。」
「そうよ。貴方達がごねるから悪いのよ。」
「……そんな事言ったって、僕達……」
「……まぁまぁ。とりあえず
着てみるだけ着ればいいじゃん。な?
別に全校生徒に見られるわけじゃないし。」
双方の対立になりそうな所を割って入ると
小道具係がブツブツと文句を言いながら
了承した。
小道具係の生徒は
ClassAの中では成績が下位の者ばかり。
だから、大口を叩けないのだろう。
成績順に生徒が並べられたこの教室は
その成績によって発言力が変わっているようで
「………ふぅ。」
なんというか、ClassAもClassAで
ギスギスしてるよなぁ。