第5章 7月『ピアノとBBQ』
「ハァ〜食った食った!
オレ様はちっと川行ってくっぜェ」
「あ、ゴロちゃんもー!」
「永田!アレを用意しろ。」
「はい、翼様。
翼様特製シュノーケルでございますね。」
「焼肉はコスパが高いからな……。
久しぶりに食べれて良かった。」
「……………ぐう。」
一通りBBQが終わり、食べ終わった者達は
川へ昼寝へと繰り出していく。
残ったのは僕と兄さんだ。
……僕達、B6の保護者枠なのかな。
「お肉、焼こっか。
兄さん、あんまり食べてないでしょ?」
「だって食べてねぇだろ。
俺も焼くの手伝うぜ。」
炭火というのは焼ける温度になるのに
時間がかかるが、火が長く持つ。
肉を入れると、ジュウーッと音が鳴る。
…焼き始めた頃と同じくらいに。
「わ、美味しそう。」
「……ああ。」
二人で網の前に立って肉を焼く。
片手にジュースを持ってごくりと飲みほした。
氷が溶けているせいか、少し薄い。
「………、本当に良かったのか?
終業式サボって。」
「……………うん。」
肉をひっくり返す。
今回、終業式を休みたい、と
言い出したのは僕だった。
本当は兄さんと二人でサボれたら
それでいいや、なんて思ってたけど。
『がサボる宣言なんて珍しい』と
悟郎が言い出し、じゃあ俺も、なら俺も、と
全員参加する事になった。
そして何がしたいか、何が食べたいかと
根掘り葉掘り聞かれ、
結果BBQになったというわけだ。
「…………………。」
タープの外では、
皆が川で思い切り泳いでいる。
それをぼんやり見ていると、
兄さんが目の前に肉を持ってきた。
「…………肉、焼けたぜ。ほら、あーん。」
「…………あーーん。ん、おいひい。」
お肉は塩胡椒で下味が付けてあって、
美味しい。
「ま、今日はせっかくだし、楽しもうぜ。」
「…………そうだね。
あ、兄さんもお肉、焼けたよ。」
「お、ホントだ。………ん!!?
うめぇけど!!熱ッ!!」
「慌てて食べるからだよ、もう。」
兄さんの口から湯気が出ていて面白い。
ふふ、と笑うと兄さんも笑った。