第5章 7月『ピアノとBBQ』
「あ、。…凄いよこれ。」
「何が?」
「何がって……自分で見ろって。」
期末テストが終わって1週間後。
2年生の教室の廊下に、
点数の順位表が張り出されている。
朝登校して廊下を通りかかると、
人だかりが出来ていた。
その中の坂下に声をかけられる。
「そんなの…見てどうするの。」
「………分かってないなぁは。
期末テストだよ?
今回の結果で席順が決まるのは
知ってるだろ?」
ClassAは成績向上のために、
席順は成績順で決められている。
一学期はクラス再編成のためにバラバラだが、
二学期からは成績順にきっちり並び替えられる
「…それが何?」
「ほら、は学年トップじゃん。
今年も一番前の窓側キープだね。」
「………いつものこと。」
毎年一番前の窓側に座るのも慣れた。
それに中間テストも一番上だったし、
今更、何を言ってるのやら。
「そうじゃないって。
ほら、2位からも見ろよ。」
「…………………げっ」
見るとすぐに坂下の言っている意味が分かった
席順は成績で一番前の窓側から
横にずらりと並んでいく。
だから、すぐに誰が何処に座るかは計算できた
そして、僕の周りの席の人達は……
「奇跡じゃない?
の周りみーんな女子だよ。
まるでハーレムだね。」
「嘘だ……。」
僕の隣、後ろ、斜め後ろ全て
女子に囲まれている。
僕の席は男子とは決別させられた籠城だった。
「………………はぁ。」
お昼休みだが、僕の気分は最悪だ。
新学期が恐ろしい。
女子というものは……見かけるだけで叫び、
手を振れば発狂し、
誰かを贔屓すると癇癪を起こす化け物だ。
黄色い悲鳴にも未だに慣れないというのに、
そんなのが3人も囲んでいると考えると
気が遠くなる。
俯いて歩いていると、
隣に蒼いジャケットが見えた。
「………君。
今回も、凄い成績だったね。
結構、難しい問題…出したつもり
だったんだが…君には簡単だったかな。」
「………………鳳先生。」
顔を上げると鳳先生がいた。
僕が立ち止まると、
鳳先生は心配そうに僕を覗き込む。