第4章 6月『緊張』
「君!!
くーーーん!!
待ってーー!!」
「………?」
誰かに呼ばれて振り返る。
後ろを見ると、南先生が渡り廊下の
遠くで手を振って、走ってきた。
声が渡り廊下中にぐわんぐわん響く。
うう、耳が痛い。
「……………。」
「…はぁ、はぁ。やっと、追いついた。」
「………なんでしょうか。」
南先生は走ってきたからか
息絶え絶えで、
膝に手を当てて息を整えている。
「…ぜぇ……はぁ。
あのね、聞きたいことがあって!」
「………はぁ。なんでしょうか。」
南先生が聞きたいこと?なんだろう。
………あ、もしかして。
「…職員室はそこの階段を降りて左です。」
「……あぁ、
ありがとう………って、
そうじゃなくて!!」
………なんだ、違うのか。
てっきりまた迷子になったのかと思ったのに。
「君って、
B6の好きな食べ物とか分かる?」
「…好きな食べ物?」
「そう!好きな食べ物とか、
苦手な食べ物とか!」
「……まぁ……一応…。」
B6の好みなら、
頭には入れてるつもりだ。
嫌いなものが入ってると
みんな文句言うからすぐ分かる。
聞いているうちに覚えてしまった。
いや、僕が知っているのはいい。
でも、
「………それを聞いて、
何するつもりです?」
問題は、その後だ。
「……えっ!?えっと……あの……
そ、そ、そういう身近な所から〜…そう!
補習プリントを!作ろうと思って!
あはは〜!」
「………ふぅん……。」
南先生は明らかに嘘をついている。
口元は引きつってるし、
棒読みだし。
もしかして………。
「…………まさか、料理ですか?」
「……………そ、そ、そ、
そんなわけないじゃない!!
いいいいいいいから、教えて!はやく!」
「……………………。」
南先生が動揺し始めた。
…図星のようだ。
たしか、南先生の料理って………。
…………うん、確か物凄くヤバかった。
このままじゃ、
B6の皆にアレを食べるハメになってしまう。
なんとか、普通の料理に
出来ないだろうか。
「………えっと、B6の好きな食べ物は………。」