第4章 6月『緊張』
後日談
(視点)
「!これからバカサイユか?」
「……………そうですけど。」
お昼休み、僕がバカサイユに
山田さんのランチを食べに行こうとすると、
真田先生に会った。
「……そっか。その、
俺も職員室行くとこだから一緒にいいか?」
「…………………。」
最近真田先生がひっきりなしに
引っ付いてくる。
先日の体育祭の一件からだ。
……ちょっと、鬱陶しい。
「な?いいだろ?良いよな!
…今日2-Cの授業で面白い事があってさぁ…」
「………………嫌。」
「え?」
「……………嫌です。
付いてこないでください。」
僕がそう言いつけると、真田先生が固まる。
尻尾を振っていた子犬が一転、
尻尾は垂れ下がり耳が折れた。
「…………ご、ごめん。」
「……………じゃあ、また午後の授業で。」
調子に乗らないでよバーカ。
たまには、お灸すえてやるんだから。
固まる真田先生を置いてそのまま歩き出すと
影から瑞希が出てきた。
「……あれ、瑞希。
2年生の教室の廊下にいるなん珍しいね。」
「…………ん。を……待ってたから。」
「トゲトゲ!」
「……そう。」
2年の廊下は瑞希のせいで
いつもに増して騒がしい。
瑞希が僕の手を握って歩くと
周りから黄色い声が上がった。
「………。」
瑞希がふと後ろを振り向く。
僕も振り向くと真田先生がまだ固まっていた。
「………………にやり。」
そして、瑞希が真田先生に
嫌味を込めて笑いかけ、
また僕の手を引っ張って歩き出す。
「…………瑞希、今のどういう意味?」
「……なんでも、ない。
………よしよし。
はいい子。いい子。」
優しく僕の頭を撫でる瑞希は
ずっと笑っていた。
『作戦大成功……。
子犬には渡さない……。』
「……………うーん?」
瑞希って……たまに
訳分かんない事言うんだよね。