第4章 Third
17時を過ぎる頃、家族とともに夕食を取り終えた朱音は、いよいよ気持ちの昂りが最高潮に達するのを感じた。あと30分もすれば、私はこの家を出て、空港に向かうのだ。今までひとりで飛行機に乗ったことなどなく、少し不安はあるが、それよりも楽しみという気持ち、そして、吹雪に会えるという喜びの方が断然強いのだった。
「朱音、そろそろ出る時間よ」
ドア越しの母の声に返事を返しながら、念入りに準備、確認をしてきた荷物を持ち、そしてもう一度、姿見に自身を映す。アウターに選んだオフホワイトのロングコートを羽織った自身を見つめ、何もおかしなところがないと確認をした朱音は、少し緊張した面持ちながら自室を出た。
「気をつけていってらっしゃいね」
「楽しんでおいで」
「お母さん、お父さん、ありがとう。行ってきます!」
夕方の空港は、思っていたよりも人が多く驚きながらも自身の乗る便を確かめては、早々に荷物を預けた。そして朱音は、父母に挨拶を済ませ、搭乗案内に従い、機内に乗り込むのだった。