第11章 宿屋

目を覚ますと、マルコが髪を撫でてくれていた。


いつの間にか寝ちゃったみたい。


目の前にあるマルコはお風呂上がりだからか、上には何も着ていなかった。


｢ま、マルコ！

服！｣


｢あ？

風呂上がりだと暑ぃんだ、気にするなよぃ｣


｢そんなの無理...｣


逞しい肉体に、顔が赤くなっていくのが分かる。


気にするなって言う方が無理だ。


顔を両手で塞ぐと、首ごと視線を逸らした。


｢俺らの船に乗るんだったら、このぐらいで照れてちゃ身が持たねぇよぃ。

男所帯だ、こんなもん普通に見る｣


｢だ、だって...｣


逞しい身体にまたドキリと心臓が脈打つ。


顔だけじゃなく、きっと耳まで真っ赤だ。


｢...徐々に慣れていけよぃ｣


ポンポン、と慰めるように頭を撫でるマルコ。


｢ごめんなさい...｣


｢別に怒ってねぇよぃ｣


｢熾天使のことだ。

今まで女の身体もあんま見たことねぇんだろ？｣


｢...うん｣


｢なら仕方ねぇよぃ。

だからそんなに気にするな｣


｢ありがとう｣


慰めるように優しく頭を撫でてくれるその手つきに、胸がキュンと締めつけられる。


｢マルコ｣


｢ん？｣


｢好き...｣


｢は？｣


｢え？｣


あ、あれ？


私今なんて...。


｢おい、熾天使、お前...｣


｢わ、分かんない！｣


なんでそんなこと言ったのか分からず、首を振り続ける。


私今...好きって言った？


マルコのこと、好きって...。