第2章 不死鳥の帰還
「痛いよぃ」
幸いにも船へのダメージはなかったものの、マルコ自体にはダメージがあったようだ。
切れた口端の血を拭いながら、ゆっくりとした足取りでナツキの元へと歩く。
「お前はもううちの船のクルーだよぃ」
「嫌よ。
私は目立ちたくないの。
白ひげ海賊団になんて入ったら、目立つに決まっているでしょう?」
「お前こそバカだねぃ、熾天使。
賞金首を隠すのは賞金首の中。
ここはうってつけだと思うがねぃ」
「理屈は分かるけど、流石に無理がある」
「まぁ、それもそうだねぃ。
でも1人で居るよりはよっぽど安全だよぃ」
1人の方が身動きは楽だが、それでも私は戦闘に優れた方とは言えない。
それは分かっている。
この先1人で生き抜くか、白ひげという大きな名前に守って貰うのか。
「グラララ。
どんな理由であれ、お前はもう俺の娘だ、ナツキ。
存分に警戒しろ、でもするだけ無駄だァ。
うちにゃァ、バカだけど良い息子達しか居ねェ」
娘。
その言葉に、心が跳ねる。
いつ以来だろうか、そう呼ばれたのは。
「……私が娘になっても厄介なだけよ?
きっと後悔するわ」
「娘を作って後悔する親なんざ、親じゃねェ。
俺は絶対後悔しない。
ナツキは今日から俺の娘だ!」
その言葉に、心が動く。
ポン、と頭に置かれた大きな手はとても温かかった。