第9章 笑顔
すでに船を出てから、丸1日ぐらいは経っただろうか。
朝日が昇るのと沈むのを目にした記憶がある。
熾天使の身体に負担をかけないようにしながらも、急いで飛んでいる。
こんなに飛び続けたことは過去になく、身体がギシギシと悲鳴を上げ始めている。
「っ、なんだよぃ」
飛んでいるといきなり下から手が飛んで来た。
敵襲かよぃ、こんな時に。
ヒヤリと背中に汗を流し、次なる攻撃に備える。
にしてもこの手はどこから…。
そう不思議に思い、下を見下ろす。
「!」
自分が飛んでいる方向に船が見えた。
ドクロを掲げる海賊船だ。
船の顔はライオンとも太陽ともとれる。
「あの船…」
目を凝らし、よく見る。
帆には麦わら帽子をかぶったドクロマークが。
「間違いねェ、麦わら達の船だよぃ」
そのまま真っ直ぐ、目的の船を目指して飛んでいく。
待ってろよぃ、熾天使。
もうすぐだ、もうすぐ治してやれる。
そして船へ降り立った。
「蒼い鳥が飛んで来たーっ。
こんにゃろ、さっきの仕返しか⁉︎」
腕をグルグル回し、構える男。
ゴムのように伸びる身体に、目の下の傷、そして麦わら帽子。
間違いなさそうだ。
「お前が麦わらのルフィかよぃ?」
「そうだ!」
腕を組み、断言した。
「ちょっとルフィ!
あんたちょっとは濁しなさいよ!
敵だったらどうするの⁉︎」
「そうしたら、ぶっ飛ばすまでだ!」
「おいナミ…もう諦めようぜ…。
あいつはそういう男だ…」