第1章 渦中の熾天使
「迂闊に人の間合いに入るんじゃねェよぃ。
死ぬぞ?」
「ぐっ…ぅ…」
首を掴み、そのまま上へ持ち上げる。
首を掴んだその手を熾天使が握り、苦しそうに脚をバタつかせる。
「悪いねぃ、こっちもさっきので手加減する訳にはいかなくなったんだよぃ」
全くの無傷という訳ではない。
これでは白ひげ海賊団1番隊隊長の名が聞いて呆れるよぃ。
苦しそうにもがく熾天使だったが、ギラリと鋭い眼差しで俺を睨んだ。
これは、何か仕掛けるな…。
そう予測すると同時に、バタつかせていた脚が顔に向かって飛んで来た。
「っと、危ねェよぃ。
脚癖の悪い女だねぃ」
「っ、はぁ、はぁ…」
なんとか腕から逃れ、呼吸を整える熾天使。
「悪いが、手加減はなしと言った筈だよぃ」
「っっ、うぐっ…ぅ…」
体勢や呼吸を整える間も与えることなく、そのまま攻撃に移った。
みぞおちと、首裏に1発ずつお見舞いした。
この時はすっかり女が相手だということを忘れていた。
「っ…」
ドサリ、と音を立てて倒れた熾天使。
その音に一瞬で我に返る。
目の前には俺が倒した熾天使と、熾天使が倒した男達。
どうするよぃ、これ。
別に放っておいても良いけど、女をこんなところに放置するのもねぃ…。
散々痛めつけておいて何だけど気が引ける。
「…連れ帰るか」
そう呟くと、足元に倒れている熾天使を肩に担いだ。
軽過ぎねぃ、ちゃんと食べてるか心配になるよぃ。