第1章 渦中の熾天使
「っ…ちょっと、外れとはいえまだここ街中よ?
大砲なんて持ち出して、他に被害者が出たらどうするの?」
「知るかよ!
てめーが大人しく捕まれば何もなく終わるんだよ!」
「嫌よ、私は捕まりたくないの」
またか…。
ここ最近静かに過ごせてたと思ったのに、どうして…。
こんなところで騒ぎなんか起こしたくなかったのに…!
気配を消し、未だ騒がしい場所へと辿り着いたマルコ。
物陰から様子を伺うと、別の溜め息を吐いた。
なんだ、うちの奴らじゃないのかよぃ。
ならば自分の出る幕じゃない、と踵を返そうとした瞬間。
キィーーン
頭に響くような、外気を震わせる音がした。
慌てて振り返ると、そこには…。
「私は静かに過ごしたいの。
邪魔しないでよね」
倒れた男達の真ん中で、平然と立っている1人の女。
後ろ姿だけだが、シャンパン色の髪には見覚えがあった。
“ 熾天使・ナツキ ”
懸賞金5億の賞金首だ。
まさかこんなところでお目にかかれるとはねぃ。
「今の覇気、お前かよぃ?熾天使」
「え……」
ギィィ、という音でも鳴りそうな程ゆっくりぎこちなくのちらを振り返る。
その顔には焦りの色が伺えた。
「もう…問題は起きちゃったし……どうにでもなれ…!!」
諦めたかのようにそう呟くと、こちらに向かい走って来る。
その目には敵意の色が浮かんでいる。
やれやれ、そうなるとこちらも応戦するしかないねぃ。
出来れば手荒な真似はしたくなかったんだが。
自分の身を守る為だ。
「恨むなよ、熾天使」