第8章 summer memory③
するとーーー・・・
ぽかっと何か紙製のもので頭を軽く叩かれる感触がした。
「へ?・・・国見くん?」
振り返ると、ロー〇ンのカフェラテを片手になにかの広告を丸めて持っている国見くんが立っていた。
「ど、どうしたの、国見くん?」
「どうしたのは、こっちのセリフ。最近の北村さんが、随分大人しいから、こっちのペース狂っちゃうよ」
私の隣の席に腰を下ろして、国見くんは私の顔を覗き込む。
「ーーー元気無さすぎ、どうしたの?」
国見くんがこんなことを言うくらい、私って落ち込んでたのかな・・・
「言え、ないかな・・・ごめん。まだ、言えない・・・」
心の中がぐちゃぐちゃで、何を話してもいいのか、
何も解決していないのに、話せることがなかった。
だから、聞いてみた・・・
「及川さん、練習ちゃんと来てる・・・?」
何もわからないけれど、それだけ・・・。
彼がちゃんと生きていることだけが、今一番、知りたかった。
国見くんは、一瞬面食らった顔をした。
けれど、その綺麗な目を僅かに細めた。
「うん。ちゃんと来てるけど・・・」
「そう、良かった・・・」
ほぅ、と安堵の吐息が漏れる。
バレーの練習にも出てこれていなかったら、どうしようかと思っていた。
でも、
「はぁぁ〜、もう・・・」
私の息よりも、何故か大きなため息をつく国見くん。珍しい。
「お互い安否確認してさ、なんなの、ほんと・・・」
「・・・へ・・・?」
自分でも間抜けな声が漏れる。
国見くんは自身の首をぐるりと回し、空を見上げながら拳で肩を叩く。
「及川さんも、心配してたよ・・・北村さんのこと」
え・・・
「及川さん、が・・・?」
「他にうちのどの選手が北村さんの心配するの」
「・・・だよね。ごめん」
「謝ることじゃないけど・・・」
カフェラテを一口飲み、国見くんは再び口を開いた。
「"りお・・・、体調崩してない?ちゃんと仕事これてんの?"って・・・俺じゃなくて本人に直接聞いたらいいじゃないですかって言ったんだよ。・・・そしたら、"俺はあの子にもう関わる資格なんてない"って、柄にも無いこと言ってたよ」
「及川さんが・・・」