第7章 summer memory②
ーーー・・・
次の日の昼下がり、洗濯物を干し終わった私はリビングで豊胸マッサージに勤しんでいた。成果は、まだ無い。
さっき起きてきたばかりの及川さんは、少しの寝癖をつけてぼんやりと自身で作ったしじみの味噌汁を飲んでいる。
(いつ、渡そうかな・・・)
ちらちらと及川さんを見ながら、便箋を渡すタイミングを伺う。
「ちょっと、今日いつもより挙動不審さ増してない?一体なに」
顔を曇らせてこちらを見る及川さん。
あ、やっぱり気づかれてたか。
そりゃ何回も振り返って見られたら流石に嫌な気持ちになるよね。
「そんなにがんばってマッサージしても、結果出さないと揉まないから!」
「・・・ちょっと謝ろうと思った私が馬鹿だったわ」
はーあ、と大袈裟に溜息をつくと、ふと、網戸にした窓に目をやる。
・・・あれ?さっきまで晴れてたのに、曇ってきた・・・
しかも雲が厚い。
(これ、もしかして・・・)
私の予想は的中した。
ぽつ、ぽつ、ぽつぽつぽつ・・・
ざぁーーーっ
空が急に泣き出した。
「ぎゃっ、雨だ〜、洗濯物取り込まないと!」
天気予報では晴れだったのに・・・
通り雨かはわからないけれど、兎に角干したばかりの洗濯物を入れなくちゃ。あ、あと・・・
「及川さん!叔母さんの部屋と私の部屋、換気がてらに窓開けっ放しだから、閉めてきて〜!」
大量の洗濯物を腕で抱えながら、私は庭から叫んだ。
「え〜」
「お願いっ!私の部屋はともかく叔母さんの部屋がびしょ濡れになっちゃう!」
「はいはい」
及川さんは思い腰を上げて二階へ上がっていった。
その間、私は大量の洗濯物をせかせかと部屋の中へと取り入れた。
「あ〜あ、折角いいお天気だと思ったのにな・・・」
戸を閉めて、リビングで部屋干ししようと取り込んだ洗濯物をかけ始める・・・。
全ての洗濯物をかけ終わり、よし、と一息ついたところで、二階に上がったはずの及川さんが、まだ戻ってきていないことに気づいた。
そのまま自室へ戻ったのかと思ったけれど、スマホも、味噌汁もまだ飲みかけだった・・・
そこで、私はハッとした。
彼は、私の部屋の窓も閉めにいったはず・・・
(てことは・・・ーーー!)
昨日の記憶が蘇る。
あの綺麗な女の人・・・
私は二階への階段を駆け上がったーーー・・・