第6章 summer memory①
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「ただいまで〜す」
「あ、おかえり〜りおちゃん」
帰り慣れた"我が家"。私は玄関でパンプスを脱いだ。
叔母さん今日は早かったんだ。
味噌汁のいい匂いが廊下まで立ち込めている。
「ん〜いい匂い、叔母さん、今日のご飯はなんですか?」
「今日は鮭のムニエルと生春巻きよ〜ん」
「美味しそう!手洗ってすぐ来ますね!」
「は〜い、あ、徹も呼んできてもらっていい〜?」
「わかりましたーっ」
やった、やった、お腹空いた〜。
一度自室へ戻り、カバンと上着を置いてから洗面所で手を洗い、その足で及川さんの自室へ向かった。
コンコンと引き戸をノックする。
「及川さーん、ご飯だって〜」
少しして部屋の奥から物音がする。すぐに扉が横にスライドし、及川さんが出てきた。
でも、あれ?なんだろう・・・なんだか顔が・・・
「怒ってる・・・?」
不機嫌そうに曇っていた。わかりやすいんだ、及川さんって。
「べっっっつに!」
私の顔を見るなり舌を出す及川さん。ほんとこういう所子供だな。
「私関係?私、何かした?」
全然心当たりはないけれど、私を見るなりこういう顔になったから、一応聞いてみた。すると、及川さんは少しだけ黙った。
ん〜〜?
気になって及川さんの顔を覗こうとした時、バッと顔を上げた。
わ、びっくり。
「・・・しそうに話してたね」
「ん?ごめん、最初の方聞こえなかった」
ぼそぼそと話すのは及川さんらしくなかった。
「だからぁ」
私の顔を、見ようとはせずに及川さんは言った。
「国見ちゃんと、楽しそうに話してたねって言ったんだよ!」
「えっ・・・?」
もしかしてそれって、お昼休憩のこと?
どこで見てたのやら・・・
それが、及川さんの気に入らないポイントに何故入ったんだろう・・・
「国見ちゃん、仕事できるしバレーも上手かったし太鼓判押せるけど、りおには勿体無いかんね」
「ちょちょ、待って待って。私、別に、国見くんのことそう言う目で見てないしっ」
何か勘違いしている及川さんを慌てて宥める。まるで、この間、及川さんに彼女がいるんだと思い込んで勝手に落ち込んでた私みたいだ・・・