第6章 summer memory①
ーーー・・・
「ーーー・・・で?認めたら誰かに相談するしかなくて、俺をランチに誘ったって訳?お昼代まで奢ってくれて」
「えと・・・はい。国見くんほど冷静に客観的な視点から物事見てくれる人が他にいなくて・・・」
明くる日の月曜日、私はお昼休み、屋上で国見くんとコンビニで買ったお昼を食べて、今の心境を告白していた。
国見くんなら、ベストな答えをくれそうだし、ダメならダメってはっきり言ってくれると思ったから。
(まぁ駄目でも・・・諦められそうにないかもだけど・・・)
ふうん、と私が買った(相談料として)おにぎりを食べる国見くん。パリッと海苔のいい音がする。もぐもぐと一口食べて、国見くんは呟くように言った。
「及川さん、ね・・・魅力は満載だから仕方ないよね・・・。ましてや、ひとつ屋根の下に住んでる訳だし」
そうだ。他の女の子じゃ味わえないような、いわゆる同居生活を送っている私にとって、異性として見ずには居られなかった・・・。
(なーんか意識しちゃったら、顔まで見れなくなっちゃいそう)
今日も朝、私が出勤する頃に起きてきて、その寝ぼけた顔にすら、ときめいてしまう自分がいた。我ながら重症過ぎて泣ける。
「うん。一緒に住んでるから、下手に気持ちなんて伝えられないし・・・」
ミルクをたっぷり入れたアイスカフェラテを一口飲む。
「もう。国見くんに、及川さんには惚れない方がいいよって忠告されたのにね、全然その通りにいってないや」
「そんなことも言ったね、確か・・・」
別に、国見くんが及川さんを嫌ってる素振りもないし、きっとチャラいからとかそんな理由で言ったんだろうな。だけど私は・・・素の彼を知っているから、それで好きになったから・・・
「いいんじゃない?がんばってみたら?」
「へ?意外な言葉・・・」
「まぁ確かに、おすすめはしてないけどさーーー・・・」
ベンチで隣に腰を下ろした国見くんの髪の毛が、初夏の風に揺れる。そして無気力そうな瞳が確かに私を映した。
「好きになっちゃったもんは、止めらんないんじゃない?」
うん。そうなんだよね。
誰に何を言われたってさ、絶対に好きになんないって言ったってさ、
好きになれば、帳消しになっちゃうんだよ・・・。