第6章 summer memory①
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バレー用品を買いたいと言い出した及川さんの提案で、私たちはいつものショッピングモールに来た。
日曜日のそこは、平日よりも混みあって、賑わいを見せていた。
スポーツショップへと足を運び、及川さんの後をついていく。
「シューズとか練習着って、実費なの?」
「いや?服もシューズもサポーターも、その他テーピング諸々も、全部会社が契約しているスポーツメーカーのものを使うように指示されてるよ。だから、イコール、タダ」
ほー。流石プロチーム。メーカーのものは使いたい放題なんだ。
「だけど俺、テーピングだけはこれじゃないと、しっくりこないんだよねぇ」
と、こだわりのテーピングをごっそりと籠の中へ入れる。買い溜めか。あ、ちなみに買い物カゴも前は私が持ってたのに、最近は及川さんが持ってくれるようになった・・・
「指とか、やっぱり怪我が多いの?」
「いや?中学高校の頃はブロックで突き指とかしょっちゅうしてたけど、社会人になって自分のプレーが確立した頃には、もう滅多な事じゃしなくなったかな?・・・ただ、テーピングしてる手でバレーするのが当たり前になってて、何もしてない方が、何か違和感あんだよね」
と、自分の手を広げてみる及川さん。
ふぉー、大きな手だな。だけど、なんというか、繊細な手。
まだ彼のプレーは見たことないけど、こないだの青城の子達のように、この手でボールを打ったり、受けたり繋いだりして・・・がんばってるんだよね。
プロって言うのも勿論凄いけど、それ以前に何か1つをこの歳まで続けるって、やっぱり尊敬するなぁ・・・
「なに?そんなマジマジと見て。繋ぎたくなった?」
へらりと笑って、私の前にずいーっと手を出してくる及川さん。そんな無遠慮さに、ため息をついた。
「繋ぎません」
「ハイハイ、素直じゃないんだから」
「本心です!」
それから、大量のテーピングをレジに持っていき精算した後、一階に降りた。すると、なんだかイベントホールが賑わいを見せていた。
「あれ、なんだろ?」
私が指さすのは、いつもはない黒い建物があったから。徐々に近づいていくと、及川さんは心底嫌な顔をして見せた。
「げっ、これって・・・」