第6章 summer memory①
そう言えば、及川さんも今日は私服だったな。
ちらりとメニューの端から顔を覗かせて彼の姿を盗み見る。
白のシャツに、その上からネイビーのサマージャケットを羽織り、黒スキニーを履いて全体的に落ち着いたお洒落スタイルの彼。
今気づいたんだけど、お互いネイビーの服着ててまるで・・・
(お揃いみたい・・・)
カップルがするような、それと同じだということに気づいて、急に気恥ずかしくなった。
「ちょっと・・・トイレ行ってくるっ」
変な空気を変えるように私はお手洗いに立った。
きっとパンケーキ、すぐにはこないよねっ
足早にお手洗いに向かう。
お手洗いに一番近い席を過ぎるとき、そこに座っていた女の子3人組の会話がふと耳に入ってきた。
「そこのさぁ、厨房近くの席にいる男の人、めちゃくちゃカッコイイ」
「え、さっき入ってきた人でしょ?わかる!」
「え、どれどれ?・・・あ、分かった。今ちょっと頭かいた人?」
私の話をしている訳じゃないのに、ドキッと心臓がはねた。だってわかる。誰の話をしているのか・・・・・・
私は彼女たちに怪しまれないようにコソッと壁に隠れて彼女たちの話を立ち聞きした。
「はぁ〜あれはかっこいいね、うん」
「満場一致だね」
「モデルみたい〜」
私より年下の彼女たちは、彼・・・及川さんの話をしている。厨房近くの席は、私たちの席だ。
まぁ、彼の人気は会社でも知っているし今更驚くことなんてないんだけど、改めて外で彼の顔面偏差値の威力をここで知る。
「あぁいう人、いいよね。程よく遊んで、女の子の扱いに慣れてそうな」
「わっかる!今どき真面目男子なんてつまんないよねぇ〜。ちょーっと遊んでたくらいの方がいいわ」
こ、この子たち・・・!結構なこと言うのね・・・っ
清純そうで可愛い子達なのに、恐るべし・・・
「そういう人ってさ、最初のキスで分かるよね〜。上手い人はそれだけで落ちそうになっちゃうもん」