第1章 spring memory①
「お待ちしてました〜!」
拍手が鳴り響き、つられて私もする。
部屋の電気は落とされているため、たった今入ってきた二人組の男性の顔は逆光でよく見えないけれど、背丈は高く、体のシルエットは結構いい体型をしているのがわかる。
(さっき行ってたバレーの選手の人達だ)
すぐに分かった。うん、やっぱりバレー選手!って感じがする。
「こっちの席どうぞ!」
そう言って、一人は誘われるように人の間を縫って私の向かいの席に腰を下ろした・・・。
180くらいある背丈に引き締まった体。茶色のコートを無造作に脱いだ姿が絵になる。捲った袖から見える腕の筋がなんだか色っぽくて・・・。ラフにセットされたヘアスタイルが似合う、整った顔立ちだと言うことが、暗がりの部屋の中でも、横顔からでも分かった。うん、この人、イケメン枠の人だ。
既に室内にいた新入社員の女の子たちは、ひそひそと話しながら、乙女な目線を彼に送っていた。
「皆さんはじめまして〜、トオルです。今日はお邪魔しちゃってごめんねぇ〜」
フランクで親しみのある声と口調。拍手が巻き起こる。
向かいに座る私は、そんな彼の事をナチュラルに真正面から見ることが出来て、少し得をした気分。
あー、本当にモデルみたいな人だな。
そう思いながらじっと彼を見ていると、不意に視線がバチっと交わった。
(あ・・・)
うん、やっぱり正面から見ても優しげな、整った顔のナイスガイだ。ってそうじゃなくて・・・
(やば・・・)
ペコっと笑顔で会釈をすると、彼は口角を上げて返してくれた。あ、愛想いいな、好感もてる。
そんな"トオル"さんをもてなすようにビールジョッキが運ばれてきて、再び乾杯をする。暫く歓談していると、男の子に話しかけられる。
「ね、北村さん次曲お願いね!」
あ、そうだった。私デンモク渡されていたんだ。慌てて膝の上に乗せていたままのデンモクに目を落とし、曲を入れる。
他に曲が入っておらず、私の入れた曲のイントロはすぐに流れ出した。
「あーこれ懐かしい!いいね!」
即時反応、ありがとう!そう、私の世代はモー〇ング娘。ごまきを愛してました〜
受け取ったマイクの片方を近くの女の子に渡し、一緒に、そしてお酒の力も使ってちょっと振り付きで歌ってみたり。
目の前のイケメンの彼へのドキドキをかき消すように歌った・・・