第1章 spring memory①
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「このお兄さんがフリータイム安くしてくれるそうです!」
赤い顔をした男の子がまたしても私たちを手招く。
呑み会は予想以上に盛り上がり、二次会のカラオケに行くことに。電車の時間がある人は解散し、私を含む残ったメンバーで臨時幹事をしてくれている男の子のあとについて行く。
(二次会は予想外だけど、ま、いっかっ)
ホテルは駅から近いし、飲みの席は好きだから。
大学の飲み会も行ける範囲なら絶対参加していたから、いい人数合わせにもなっていたと思う。
お酒が程よく回っていい気分のまま、カラオケボックスの大人数部屋に入る。適当に席につくと、男の子達の話す声が耳に入る。
「俺さ、兄がここの会社務めてて、ノリのいい人呼んでるって!もうすぐ来るよ」
「え、それって上司じゃ・・・」
「やや!大丈夫、その人達、会社の持ってるバレーチームの人達だから、別枠!とにかく楽しい人たちだよ」
(へぇ、バレーの選手・・・すご・・・きっと身長高くて、体格のいい人たちなんだろうな・・・)
テレビでよく見る、日本を背負って戦うスポーツ選手は純粋に尊敬する。うちの会社のバレーチームがどれくらいのレベルかは知らないけれど、社会人になっても続けてるってことは、きっと真面目でバレーが大好きな人たちなんだろう。
どんな人なのか、気になった・・・
「はい、北村さん好きなの歌っちゃって!」
先程から幹事役をやってくれている男の子が入れた曲を、何曲か歌ったあとに、私にデンモクを渡してくれた。
「ありがとうございます」
そう言ってデンモクを受け取り、何を歌おうか曲を探していると、ガチャりと扉の開く気配がした。
「おーす、こんばんは〜」