第5章 spring memory⑤
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時計は夜の10時を回る頃・・・
私は縁側に腰を下ろしてぼんやりと月を見上げていた。
(叔母さん、喜んでくれて良かったなぁ〜)
私と及川さんが作ったのは、ふわふわ卵のハヤシライス、海鮮マリネ、ミネストローネにチキンとバジルのソテー、そして手作りのケーキとフルーツポンチ。・・・結構頑張ったと思う。
仕事から帰ってきた叔母さんに、クラッカーを鳴らしてお祝いした時の、叔母さんの笑顔がすごく素敵だったなぁ。
"これ二人で作ったの!?いやぁ〜もう叔母さん感激!本当にありがとう!"
家に着く前に寄って、こないだの花屋さんで作ってもらった花束も及川さんが手渡すと、
"今年もバレー頑張ってね。お母さんはずっと応援してるからね"
と、逆にエールを送られていた。ありがと母さんって、照れ臭そうに笑う及川さんを見てやっぱり家族が仲良しなのって、いいなぁ。
ここ一週間、仕事の合間に、作る料理に頭を悩ませた甲斐があったなぁ・・・。ワイワイガヤガヤと、及川さんと言い合いしながらも作ったご飯を、美味しい美味しいって大好きな叔母さんが食べてくれると、やっぱり心が温かくなる。
(それに今日は、バレーの試合も見に行けたし、いいお休みだったなぁ)
と、楽しい時間の余韻に浸っていると、頬にヒヤリとした感覚がした。
「ひゃあっ!」
驚いて飛び上がると、ビールを片手に持った及川さんがいた。
冷たかったのは、頬にビールを当てられたせいだった。
「あ〜びっくりした〜。もう洗い物終わったの?叔母さんは?」
「ん。母さんは風呂入りに行った。フルーツポンチのあまり、冷蔵庫入れといたから」
片付けの時に、俺がやると勝手でてくれた及川さんに甘えて、洗い物は任せてきた。
「ありがとう。フルーツポンチ、明日残ってたらゼラチンと混ぜてゼリーにするけど、いい?」
「そんなことも出来んの?ほんとシェフとかなれば良かったのに」
「あははっ。ゼリー作るだけじゃシェフにはなれないよ」
と、隣に腰を下ろす及川さんに向かって笑って見せた。
及川さんは、私に2本のビールのうちの1本を差し出してくれた。
受け取ったそれの蓋をあけると、プシュッといい音を立てた。