第5章 spring memory⑤
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決行日前日、私たちは近くのスーパーにて食材を買いに来た。
私がカートを押し、及川さんは私の先を歩き食材を物色している。
「・・・結局、何作るのか決めてるの?」
「え、俺が考えられる訳ないじゃん〜」
愚問だねっ?とでも付け足して言いそうな及川さんを見て、小さく息をつく。
(で、すよねぇ〜・・・)
私はすっとポケットから四つに折ったメモを及川さんに手渡した。
「はい。一応、叔母さんの好きな物とか取り入れて考えてみたんだよね」
私が考えた明日の夜ご飯のメニューが書いてあるメモを見た及川さんの目の色が変わったのがわかる。及川さんって意外とわかりやすい。これは、ちょっと良いって思ってる時の目だ。
「いいじゃん。てゆうか、りおこれまじで作れんの?」
「作れるよ。及川さんには具材切ってもらうのからやってもらうからね?」
「そりゃ、俺が頼んだんだし、やれることはやるよ。あ、あと味見は俺にやらしてよっ」
と、子供のようにきらきらとした目で私を見る。結構家族思いなんだよね、この人。花とか渡したり、絶対叔母さん喜ぶよ。
自分が家族が大好きな分、家族を大切にしている人は好きだ。人間として。だから、この人のこういう一面が知れて嬉しい、なーんて思ってると、及川さんはずんずん先を行っていた。
「ま、待ってよ!」
「ごめんごめん、俺の方が足長いから追いつくの大変だよねー」
けらけらと私をからかう彼。ムカッと来て、及川さんに近づくとそのスニーカーを履いた足を踏んずけた。
「いった!本当可愛くないよな、お前っ」
「いらない事ばっか言うからでしょ〜」
頬を膨らませて痛がる及川さんを見上げる。そんな他愛ない言い合いをしていると・・・
「あれ?及川さんに、北村さん?」