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おかえり〜I'm home〜(R18)

第5章 spring memory⑤





ーーー・・・


次に目を覚ましたのは、夕焼けのオレンジが部屋全体を染め出す頃だった。

私はむくっと起き上がり、ボサボサになった髪の毛を手櫛する。

寝たけど、まだ胸がもやもやしてる。つまり寝起きは悪くて、はぁーっと長いため息をついた時、コンコンと扉をノックする音がした。

「りお?帰ってきてんの?」

この声は・・・彼だ。

「・・・あ、うん」

意外と普通に返事ができて、驚いた。近くにあった手鏡で化粧崩れしてないかチェックして、扉を開ける。

扉の向こうの、夕陽に照らされ出した彼、及川さんと目が合う。

「おかえり・・・」

「ん、ただいま」

自室の前だけれどいつものように挨拶をするのが、少し不思議な感覚を覚えた。

「なんか、機嫌悪い?」

訝しむように及川さんは私をじろじろと見る。
何かこの人、勘が鋭い時あるよねぇ・・・けれど私は気づかれないように、

「や、寝起きだったから・・・」と言って流した。

そう、と呟く及川さん。それから、少しだけ、二人の間に沈黙が降りた。

何、何だろう・・・。もしかして、あの花屋で私のこと、気付いてたのかな?だとしたら、何て言われるんだろう・・・

遠くでは小さな子供たちがお喋りしながら去っていく声がする。
私は俯き、顔を隠しながら、彼の言葉を待った。



「あのさ」

彼の言葉に、ゆっくりと顔を上げる。

「・・・なに」

そう問いかけると、形の良い唇が開いては閉じて言葉をのむ。けれど次第に気恥しそうに後頭部を掻き出した。

「女の人ってさ、プレゼントって何あげたら喜ぶのか知ってる?」


・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・はい、ビンゴ。


彼女、確定です。

いや、別にいたっていいんだ。いたってどうってことない。
素晴らしいことじゃない。イケメンの遺伝子を別の人に分け与える相手がいるんだから・・・って私は何を言ってるんだろう。

兎に角、このモヤモヤが、事実を聞いて少しすぅっと引いていく感じがした。

私は、彼の顔が見れなくて・・・そっぽを向いて言った。

「・・・別に、好きな人がくれるものなら、何でも嬉しいんじゃないかな」

花でも、ピアスでもネックレスでも・・・ものはなんだっていいと思う。その人を想う気持ちがあれば・・・それが伝わるようなものなら。

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