第5章 spring memory⑤
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家に帰り、パタンと自室の扉を閉めてひとりきりになると、私はベッドにダイブした。柔らかな布団は私をどこまでも沈みこませるように包む。
この得体の知れない感情も一緒に沈んで無くなってしまわないかな・・・
折角気持ちよく買い物していたのに、あの光景を見た瞬間、なんとも言えないもやもやした気持ちが心を渦巻いていた。
いや、いいんだよ別に。
あいつに彼女がいたって普通じゃない。プロの選手なんだし、イケメンなんだし。彼女いないって言った覚えもないし。
なのに、
「なんなの私・・・」
何か、勝手に傷ついた気になってる・・・。
向こうはただ普通に恋愛してるだけなのに。
ただ、私が従姉妹だからちょっと気にかけてやったり、庇ってくれたり、美味しい味噌汁作ってくれたり、ご飯のリクエストしてただけ・・・
ちょっかいかけるのは、私が従姉妹だから。
なのになんか、私、それを勘違いしてたんだと思う。
・・・恥ずかしいな。
(どんな人なんだろう・・・)
いつもおちゃらけて、ふざけた事ばかり言ってんのに
・・・あんなに真剣にお花なんて選んじゃって。
彼をそこまで真剣な顔させる人って・・・
どんな女の人なの・・・?
「・・・でも、良かった」
まだ、芽生えてなくて。まだ、さらりと流せる感情だ。
大丈夫、いつもの通りやっていける自信がある。
だって私と彼は、いとこ同士。同居人、それだけだ。
(・・・いいや、気にしない)
何だか嫌なことは寝て忘れたい。少し、昼寝しよう。
そう思って、そのまま陽だまりの布団の中で体を丸めて目を閉じた。慰めるように優しい太陽の温もりが私を包んで、すぐに眠りに誘ってくれたーーー・・・