第4章 spring memory④
一部始終を見ていた及川さんが不機嫌そうに目を細める。
はっ!そうだ、私この人に一番迷惑掛けたんだっけ!
今度はもう粗相できない・・・!
しかし・・・
「お、北村くんこんな所にいたのか〜、今日も沢山飲もうな!」
「部長!あ、はい、ありがとうございます・・・!」
私のカラになったグラスを取り上げ新しいお酒の入ったグラスをずいっと渡してくれたのはうちの部長だ。にこにこと、曇一つない笑顔で私に乾杯を求めてくる彼を、流石に断ることは出来ない・・・
「はい、乾ぱーい・・・」
と、そのグラスを合わせようとした所でそれがひょいと取り上げられる。あれ?
私からグラスを取り上げたのは・・・
「及川さん!?」
「お、及川くん、君とも飲みたいと思ってたんだよ!今年もうちのチームを引っ張っていってくれよ!」
私からグラスを取り上げた及川さんは何食わぬ顔をしてグラスを開けた。そして、一瞬目が合ったと思うと私に透明な液体の入ったグラスを渡してきた。
「任せて下さい、って言っても、俺はキャプテンでも、エースでも無いのでセッターの仕事を精一杯全うするだけですけど」
「相変わらず君は謙虚だね!うちの部署にきてくれたら楽しいだろうなぁ」
「国見がお世話になってるので、流石に・・・」
そう言って国見くんの方を見やると、彼は監督と一緒に挨拶に回っているところだった。忙しそう・・・
「ところで北村くんは今日、何を飲んでるんだい?」
部長は私の手にあった透明な液体の入ったグラスを指した。
「えっとこれは・・・」
きっと水、だよね・・・
「焼酎ですよ。水で割ってあります」
(えぇっ!?)
そんな匂いしないけど!?そんな嘘、通用する訳・・・
「そうかそうか!相変わらず君はよく飲むね!結構だよ〜」
もう出来上がってるのかな?部長は大口を開けて笑い出した。
「じゃあ改めて、乾杯!」
そして再びグラスを鳴らして、あおる。
うん、やっぱりただの水だ。もしかして・・・私を庇ってくれたの?
ーーー・・・