第4章 spring memory④
「いいんだよ、どうせ乾杯したら自由席みたいにぐちゃぐちゃになるんだから」
そ、そういうものなのか・・・親睦会というよりただの飲み会的な・・・?
そして程なくして、エースと呼ばれる選手が壇上に上がると、威勢良い乾杯の音頭を取ってくれた。
「及川さんのトスがあれば、俺はチームを優勝に導けます!乾杯!!」
あちこちでグラス同士がカチンと良い音を鳴らす。
「ったくアイツ調子いいんだから・・・」
やれやれ、という様に及川さんが呟く。
「それだけ信頼されてるんだね、凄いね」
と月並みの感想しか言えないけれど、それを聞いた及川さんの表情は、少し嬉しそうだった。
「まぁーね!あいつには最大限の高さとパワーでじゃんじゃん点数稼いで貰わないといけないからね、100%を引き出すためならいっくらでも上げてやるよ」
意外と立て役者みたいなポジションをやってるんだな・・・
人のためにとか、一番似合わない台詞だ・・・
「まぁそれでも、なんだか女の子たちは俺の方に夢中になっちゃうから、ごめんねぇって思うけどね!」
「・・・・・・・・・」
はぁーーっとため息をつく。
こういうこと言わなければ好感持てるかもしれないのにな。
「なに、その白い目。別にお前にモテようなんて思ってないよーだ」
初対面であんな事しといて何言ってんだか・・・
不意にあの、最悪なキスのことを思い出して、むにぃっと彼の頬をつねってみた。
「いだだだっ!何、嫉妬も大概にして欲しーな!」
「だれが嫉妬よ!このナルシスト野郎!」
二人しか聞こえてない様な声で私達は言い合う。すると・・・
「君かぁ!北村くんってのは、部長からよく飲む子だって聞いてるよ〜、これから宜しくね!」
肩を掴まれて振り向くと、他部署の人が酒を片手に持っていた。
「あっはい!こちらこそ、新人ですが宜しくお願いします!」
そう言ってグラスを合わせる。
(の、飲まなくちゃ・・・!)
今日はまだ一杯目のビールだから、うん、日本酒じゃないから大丈夫だ。私はまだ半分ほど残っていたそれを見せるように全部飲んだ。
「あはは!噂通りの飲みっぷりだね、これから楽しみだよ!」
そう言ってその方はまだ別の席で同じように酒を酌み交わしていた。
「ふぅ〜」
「ったく、そんなペースで大丈夫な訳?また潰れるよ」