第35章 a LOVELY TONE
ーーー・・・
りおside・・・
「んーーー、風が気持ちいいね!」
そう言いながら、私はベランダへと続く大きなガラス戸を開け放つ。5月の涼やかな風が頬を撫で、伸びた髪をなびかせる。
夕焼けに照らされた髪はキラキラと茜色に染まっていく・・・
私はベランダに出て、そこから見える壮大な海を眺めた。
私たちは琉球の国、沖縄へと旅行で来ていた。
及川さんは、私たちが付き合って一年記念を祝うってことでこの旅行を提案してくれた。
お互い仕事だ、バレーだ・・・で忙しくて本当の1年記念日はかなり過ぎてしまったけれど、こうして後からでもお祝いしてくれる及川さんの心遣いがとても嬉しかった。
沖縄の綺麗な海でシュノーケリングしたり、
首里城を見に行ったり・・・
あの水族館は圧巻だったなぁ・・・
パイナップルも美味しいし、
サーターアンダギーを作ったり、
二人で作った手作りシーサーも可愛くできた
石垣島でのんびりできて・・・
とにかく幸せな旅行だった。
きっと、それは大好きな人が一緒にいてくれたから、
こんなに幸せに感じるんだろうな・・・
そう思って私は部屋の中の及川さんを振り返った。
「わっ」
「ぷっ、そんな驚かなくても・・・」
振り返った鼻の先に及川さんが来ていた事に驚いた。
ほんとに気づかなくて、目を見開く。
「びっくり・・・全然気づかなかった!」
「そりゃあお前が能天気に海ばっか見てたからね」
そう言って私の額を指でピンと跳ねる。
「いった〜・・・能天気って・・・いいじゃない、綺麗なんだから」
「そりゃあ良かった。気に入ってくれて」
隣に立って口端を釣り上げる及川さんは、意地悪をされても・・・
やっぱりかっこいいなって思ってしまう私がいる。
風になびく白いシャツ。
鳶色の髪から優しい彼の匂いが風に乗ってきて鼻をくすぐる。
もうこの人の恋人になって1年が経つなんて・・・
本当に早いし、その日々は充実した幸せなものだって実感する。
「・・・ありがとう、及川さん」
「なに?急に・・・」