第35章 a LOVELY TONE
不思議そうに、整った顔で私を見る。
その吸い込まれそうな瞳が・・・私は大好きだ。
「ふふ・・・この旅行もそうだけど・・・、付き合う前からも、付き合ってからも・・・沢山色んな所へ連れて行ってくれて」
地元の夏祭りにも、
みかん狩りにも、
夢の国にも、
おじいちゃんの所にも・・・、
こことは真逆の北海道にも行ったし、
大阪で美味しいものを食い倒れたり・・・
どの旅でも笑顔が耐えなくて・・・
お陰で沢山、溢れそうなくらいの思い出ができた。
旅行だけじゃなくて・・・私たちが住んでいるあの家でも・・・
沢山、幸せな思い出がある。
二人でソファーに腰掛けてテレビを見てお腹が捩れるくらい笑ったり、
私のシャワーを覗き見してた及川さんを叔母さんが引っぱたいたり、
単身赴任中の叔父さんが帰ってきた時は、みんなで食事をしたり・・・
私にとって、及川さんと過ごした日々は、何にも変えられない、
温かくて幸せな記憶だった。
だから、その幸せをくれるあなたに・・・
ふと、ありがとうを言いたくなる時が、くるんだよね・・・。
「本当に、ありがとう・・・」
すると及川さんは満足そうに笑って、私を抱きしめた。
「良かった、りおが喜んでくれて・・・」
「ん・・・?」
珍しく素直なことを言う及川さんに、私は抱きしめられながらも首を傾げた。
「喜ぶに決まってるじゃない、どうして?」
「んー・・・」
もぞもぞと顔を上げて、及川さんを見つめる。
「今回の旅行はさ、特別な旅行だから」
「特別・・・?」
よく意味が理解出来なくて・・・きょとんと首を傾げる。
そして言葉の意味を、催促する・・・
「特別・・・って?」
「りお・・・」
及川さんは私を腕から開放し、私の両肩に手を置いた・・・そして、
「今回の旅行はさ・・・」
次の言葉に、私は耳を疑うことになる・・・ーーー