第34章 Lovers memory③
そうだ。上手くいないかもしれないけど、その人に気持ちを伝えるだけでスッキリするかもしれないし・・・
そもそも、国見くんが2年も片想いするような人って・・・
きっと物凄く綺麗で器量のいい人なんだろうな。
国見くんは、ははって珍しく大きく笑った。
「伝えないよ。俺の好きな人はさ、不器用でひたすら一途な人だからさ。俺が気持ちを伝えて・・・彼女を困らせたくないし」
「そ、そうなの・・・」
国見くん・・・本当にその人を想って気持ちを抑えてるんだ。
切ない・・・本当に切ないけど、国見くんが決めたことだから、私は何も言えない・・・
「だから、今はこの想いが自然と無くなるのを待ってる。彼女の恋人も・・・俺の尊敬する人だから。二人で幸せになって欲しいからね」
「国見くん・・・」
私、酔ってるのかな・・・
国見くんの左手を両手でぐっと握りしめた。
「絶対幸せになれるよ、国見くんもっ!その人たちよりもずっとずっと幸せになれる!私が保証するっ!」
今度は国見くんが驚いたように目を見開いた。
やがて微かに開いた唇が、薄く弧を描く・・・
そして整った顔で・・・
「偉そうに・・・でも、ありがとう」
そう言った。
私はなんだか照れくさくなって頭をかいた。
「まずはさっき俺が話したことちゃんと実践してみなよ。大口叩くのはその後」
「うっ・・・は、はい・・・」
さっきまで少し切なそうな表情を浮かべていたのに、一変していつもの無気力な瞳で私を見た。
そうだ、一瞬忘れてた・・・
今度及川さんと過ごす夜が・・・私の挑戦する日だ。
なんだか、緊張するなぁ・・・
「それで・・・」
「ん?」
「及川さんと幸せになりなよ。俺の苦労を無駄にしないでね・・・」
・・・・・・?
あぁ、わかった!
きっとそれは、今まで相談に乗ってくれてた事を言ってるんだ!
「うん、わかったよ!ありがとう、国見くんっ」
「絶対わかってないよね・・・」
「へ?何か言った?」
ボソッと国見くんが言った言葉はざわついた店内では聞き取れなかった。
「何でもない」
それ以上、国見くんは笑い返すだけで言ってくれなくて・・・
それから私たちはまたお酒を酌み交わした・・・ーーー