第33章 Lovers memory②
ーーー・・・
「ただいま〜」
仕事帰り、ガチャリと玄関を開けると・・・
「おかえり〜」
既に部屋着姿の及川さんがリビングから顔を出した。
そっか、今日は仕事無い日だから・・・1日練習してたんだ。
そんな日は私よりも帰るのが早い。
そして今日は叔母さんは夜勤。こんな日は・・・
「今日はカレー作っといたかんね」
及川さんがご飯を作ってくれてる。
「わぁ、カレー?食べたかったんだよね、嬉しい」
私は靴を脱いで揃えて隅の方へ。
そして振り向いた先には・・・
「あ・・・」
目の前に、大好きな人。
及川さんは私を見下ろして・・・それから口端を釣り上げた。
「りお・・・」
ドキッと胸が跳ねる。
こんなに近くで及川さんを見上げるの、
なんだか久しぶりだったから・・・
及川さんの手が上がる・・・
あ・・・
私は甘く目を細めて、その手の行方を期待するけど・・・
及川さんの手はリビングを指した。
「ぇ・・・・・・」
「冷蔵庫にとびきり上手いプリンもあるから、いっぱい食べな?」
なんだ・・・リビングを指すために手をあげただけか・・・
てっきり・・・私に触れてくれるのかなって期待しちゃった。
「あ、うん・・・ありがとう」
少ししょんぼりした顔を見られないように耳にかかった髪の毛をかけた。
「じゃあ俺、部屋行くから・・・また明日ね」
今日も・・・早くに部屋に行っちゃうんだ。
喧嘩したわけじゃないのに・・・この距離が寂しい。
「おやすみ、りお・・・」
及川さんが私の横を過ぎようとした時・・・
「お、及川さん・・・っ」
私の口は、彼の名を呼んでいた。