第30章 epilogue
RRRRRR・・・
するとテーブルの上に置いたスマホが着信を知らせる。
「あ、パパねきっと。ごめん、ママ手が離せないから出てくれる?」
ポトフをかき混ぜながらそうお願いすると、弾かれたように小さな手でテーブルの上のスマホを取った。
「もしもしパパ!?ぼくだよ!ママはごはんつくってるよ!うん、うんっ!わかったっ!きをつけてねっ」
嬉嬉として電話を切ると大きな声で
「パパもうすぐ帰ってくるってー!」
とソファーの上に飛び乗りトランポリンのように跳ねた。
「はーい、危ないからソファーでぴょんぴょんしないの。パパ、今駅って言ってた?」
「うんっ!」
「じゃあもう少しで着くわね。ご飯も炊けたし・・・おばあちゃんに知らせてきてあげて?」
「はぁーーーい!!!」
そう言って突風のように家の中をかけていく。
その元気いっぱいな姿を見たら・・・彼も驚くかな?
ほんと、毎日、目が回るくらい・・・やんちゃなのよ。
(さてと・・・、彼のリクエストのご飯も作ったし・・・)
エプロンを脱いで、伸びをする。
指先がさっき切っていた玉ねぎの匂いがしないか確認して、
私も"お義母さん"の元へと後を追う・・・
「ありがとうございます。ご飯作ってる間、見てもらっちゃって・・・」
「いいのよいいのよ、りおちゃん!ちょうど今、起きたところなの。パパが、帰ってくるのがわかったのかしらねぇ」
そう言って話すのは、私がこの家に来てからも、この家に嫁いでからも何一つ変わらない優しい笑顔。
おばあさんになったその顔つきは更に優しく慈愛に満ちていた。
変わったのは私かな?
"叔母さん"のことを、"お義母さん"って呼ぶ日がくるなんてね。
「ふふ・・・そうみたいですね・・・」
お義母さんの腕の中から、寝起きの温もりを腕に抱く。
「おはよ。ちゃんと大人しくねんねしてて偉かったね。・・・それじゃあ、パパのこと、お外までお迎えに行こっか・・・」