第29章 1 years later②
「なに。そのお願い・・・可愛すぎんだけど」
私の頭を撫でながら及川さんは目を細める。
「言っとっけど、俺だってお前として以来、誰のことも抱いてないからね。ちなみにキスだってして無いし」
「え、そうなの?イタリアって、挨拶代わりにキスする国だと思ってた」
「頬にね。それも大体は頬同士をくっつけるだけで、頬に唇押し付けてくんのは相当なファンくらいしかいなかったよ」
「・・・・・・・・・」
「あ、今、頬にキスはされたんだって思った?仕方ないじゃん、俺も不意に来られると困るけど、大体は握手で済ませるようにしてたよ」
妬かないよ〜って及川さんは私の僅かにむくれた頬をむにっと触った。
「大丈夫。たまには俺のことも信用してよ」
「信用してるし・・・」
ただ、及川さんは私と違ってスターだし、かっこいいし、ファンの人達の中で及川さんを本気で好きな人だって絶対にいるはず。
私だけのものになってくれたのに・・・
なんだか顔も見たことないその人に取られちゃいそうで・・・
心配になっちゃいそう。
「そう?まだ不安そうな顔してんね」
私の心の迷いなんて及川さんにはお見通しなようで、及川さんは鼻と鼻が触れるくらいまで顔を近づけて私と目線を合わせた。
「・・・それじゃ、不安なんて消し飛ぶくらい可愛がってあげるから・・・お前は大人しく俺に愛されてなよ」
そう言って、唇を重ねられた・・・