第29章 1 years later②
及川さんはふっと笑うと、私の体を抱き上げた。
「へ!?」
突然宙に浮いた私の体。
子供を抱くみたいに軽々と抱き上げられて呆気に取られていると、及川さんは靴を脱いでスタスタと家の中に上がっていった。
「よいしょ」
ちょっと、私まだ外履きの履いたままなんだけど!
「ただ〜いま〜」
そして住み慣れた我が家を私を抱き上げたまま歩いて行き・・・辿り着いたのは及川さんの部屋の前。
横引きの襖を開けて中に入る。
「お、電話で言ってた通り、干したての布団じゃ〜ん♪」
子供のように言い放ち、及川さんはその布団の上に私をぽすんと下ろした。そして流れるように、私の外履きを脱がして・・・裏を重ねて隅へと放った。
私はふわふわの布団の上で及川さんの行動を見ていると、私の目の前に及川さんがずいっと顔を寄せてきた。
そして、また唇を奪われる。
「んっ」
「へへ、隙あり〜」
今度のは軽く、1度だけ触れるだけのもの。
イタズラする子供みたいな顔で、及川さんは満足げに笑ってる。
「・・・もう」
そんな彼が愛しくて仕方ない。
及川さんは私の上に覆いかぶさって、私を見下ろす。
「ね・・・、さっきは余裕なくてあんな風にがっついちゃったけど・・・」
伸びた私の髪に指を絡める。
「俺、本当にお前を大切にしたいから、嫌なことあったら言って?」
一年前、一緒に過ごしてきた日々の中での彼は、意地悪だったけど優しいなって思ってた。
けど、いざ彼の恋人になれた途端、こんなに特別に思ってくれるんだって思うと嬉しくて、胸がじゅわっと温かくなる。
嫌なことなんて・・・ひとつもないよ。
ただ・・・
「私、その・・・及川さんと・・・して以来・・・それきり何も無いから、ほんと、久しぶりで・・・だ、だから・・・」
そろりと及川さんの胸元に目がいく。
あ、私があげたスポーツネックレス、まだ付けててくれてるんだ・・・
「だから?」
「だから・・・」
及川さんの催促にもじもじと、脚を擦り合わせる。
緊張で肩が強ばる・・・
「や、優しくしてください・・・っ」
ぎゅっと目を閉じて、言い切る。